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「大体、何故環を連れてきたのだ。」
「仕方ないでしょう、あいつは今日一日用事があるんだから。一人にする訳にはいかないでしょう。ほら、環。殿に謝れ。」
父にそう促され、環は頭をぴょこんと下げた。
「ごめんなさいでした、お姉ちゃん。」
「………『お兄さん』だ。左近、少し話がある。」
苦々しく環の言葉に訂正を入れ、三成は左近を呼び出した。
やれやれといった様子で左近は立ち上がり、ぽんっと環の頭を撫でた。
「環、父上はちょいと用事が出来たから、良い子にして待ってなよ?」
「はい、父さま!」
環は元気良く返事をし、左近と三成は去っていった。
一人残った環は、何を思ったのか、部屋から出て庭の方へと歩き出した。
三成の執務が片付くのを待っていた幸村と兼続だったが、ふと幸村があるものを見付けた。
おもむろに立ち上がった幸村に兼続が不思議そうに訊く。
「どうした、幸村?」
「兼続殿、あんなところに女子が……」
幸村が指を差した方向には、確かに小さな少女が屈んで何かをしていた。
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