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気になった二人は、その少女の元へと近寄って行った。
「こんにちは。」
幸村がそう話し掛けると、少女は少し驚いたように目を見開いたが、すぐに笑顔になった。
「こんにちは!」
その明るい笑顔に、幸村と兼続は和んだ。
兼続が少女の目線と合わせるように屈む。
「名は何というのだ?」
「えっと、環です!」
「ほう、環か。良い名だ。」
兼続が環の頭を撫でながらそう言うと、環は嬉しそうに笑った。
「環は、父君や母君はいないのですか?」
「んっと、父さまは今お仕事で、母さまはお出掛け中なの。」
環は物怖じせず、はきはきと答えていく。
環の言葉に二人は、環は恐らくこの佐和山の者なのだろうと理解した。
「それで、環は一体何をしていたのだ?」
「お花を摘んでたの!」
環は両手を兼続と幸村の方へと突き出した。
環の両手には、何本かの花が握られている。
「お姉ちゃんに、迷惑、かけちゃったから……お姉ちゃん、喜んでくれるかなって思って。お姉ちゃんと、仲直りしたかったの。」
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