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「川が、ありましてね」
それはそれは綺麗なのです。
一度兼続殿もご覧になった方がいい。
「あぁ、そうしよう」
「そこにはあの方が好きな花がたくさん咲いてるんです。あの、ええと、あぁ忘れてしまった。あの春に咲く匂い高い淡紅色の」
「沈丁花か」
そう、それです。兼続殿は博学でいらっしゃる。私はどうにもそういうのに疎くて。三成殿にもよく怒られます。
「そういえば三成殿は?」
「…幸村、三成は」
「あぁすみません、あの方は実家に帰っていたんでした。母親が伏せっているとかで」
「…そうか」
「兼続殿、実は私、明日にでも三成殿に自分の思いを伝えようと思っているのです」
なんと言おうか、昨日一晩寝ずに考えたんです。だけどもいざあの方を前にしては言えそうにないような、歯の浮く台詞ばかりなのです。そんなとき、兼続殿のように柔軟であればと、いつも思ってしまいます。
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