20人が本棚に入れています
本棚に追加
090329 空を、
空を、飲み込んでみたいのだと彼は言ったのだった。空は私達にはあまりにも大き過ぎるから、腹が立つと短気な彼はいつも口を尖らせていたのだった。そんな彼をいつも笑いながら見つめていたのが私だったわけだけれど、ああ、やはり間違えていたのかもしれない。理解者のフリをして内心彼を馬鹿にしていたのは、紛れもない私だったのだろう。
「空を、飲み込んでみたい」
「知っているよ」
「空を、飲み込んでみたい」
「だから、知っているってば」
「見ていてくれ」
何を、と口に出す前に彼は大きく手足を伸ばして高らかに飛び立ったのだった。
空を飲み込んでみたいのだと言った彼ははたして飲み込むことが出来たのか、それとも飲み込まれてしまったのか。
(090329)
最初のコメントを投稿しよう!