如月さん、お仕事です!

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  「ふむ、間違いないと言えば嘘になるし、ところが一切間違っていないというわけでもないのだよ。物事に百パーセント間違いないことなど無いのだからね。だから、ここが月屋かどうかの見当はつけられても、確証は無いということになる」    自分でも何を屁理屈並べているのやら、と呆れてしまうのだが、こちらから依頼を拒否すれば「彼」に怒られるのであって、つまりは相手が依頼さえしなければ私の勝ちなのである。  電話口で屁理屈を並べる男に、わざわざ依頼しようとは思わないだろう、と踏んだのだ。   「はあ。まあ、そんなことはどうでも良いざます」    今更ながら、電話の主は女性だった。私の屁理屈をどうでも良い、の一言で済ませてしまうとは……できる。   「うちの雛舟太吾郎丸(ひなふねだいごろうまる)ちゃんを探して欲しいざます。報酬は、うんとはずみますから」    雛舟太吾郎丸。これはまた大層な名前だ。相手の言葉使いから察するに、どこぞの坊ちゃんか何かだろう。それにしても、今時「ざます」とはなかなか言わないものだが。  
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