39人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「ふむ、間違いないと言えば嘘になるし、ところが一切間違っていないというわけでもないのだよ。物事に百パーセント間違いないことなど無いのだからね。だから、ここが月屋かどうかの見当はつけられても、確証は無いということになる」
自分でも何を屁理屈並べているのやら、と呆れてしまうのだが、こちらから依頼を拒否すれば「彼」に怒られるのであって、つまりは相手が依頼さえしなければ私の勝ちなのである。
電話口で屁理屈を並べる男に、わざわざ依頼しようとは思わないだろう、と踏んだのだ。
「はあ。まあ、そんなことはどうでも良いざます」
今更ながら、電話の主は女性だった。私の屁理屈をどうでも良い、の一言で済ませてしまうとは……できる。
「うちの雛舟太吾郎丸(ひなふねだいごろうまる)ちゃんを探して欲しいざます。報酬は、うんとはずみますから」
雛舟太吾郎丸。これはまた大層な名前だ。相手の言葉使いから察するに、どこぞの坊ちゃんか何かだろう。それにしても、今時「ざます」とはなかなか言わないものだが。
最初のコメントを投稿しよう!