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「実はボクにも分からないんだ…」
「分からない?」
自分の事なのに分からないなんてそんなことがあり得るのだろうか…
でも、本当に分からないのだとすると…
「自分がなんであんな所にいたのかが分からないんだ…」
「記憶喪失か?」
「う~ん…多分違うと思う…。他のことは覚えてるけど、何であんな場所にいたのかが分からないだけだから…」
「なるほど…」
ある部分だけ忘れてしまう記憶喪失の話はドラマやアニメで聞いたことがあった。
しかし、そんなことが分かっても病院に行ってみなければ本当に記憶喪失かどうかもわからない。
「お前身分証明書とか持ってるか?」
「持ってない…」
それはそうか…
中学生の女の子がそんな物持ち歩くはずないもんな…
「どうしよ…」
「どうしよって言われてもなぁ…俺にはどうしょうもないし…」
その言葉を最後に部屋は沈黙に包まれた。
その沈黙にたえきれなくなった俺は思いついた言葉を適当に発した。
「とりあえず今日は帰れ!」
「帰るってどこに?」
「どこって自分の家に決まって…」
途中まで言いかけて気づいた。
記憶喪失のせいで、ここがどこだかも分からない女の子…
そんな子が自分の家に帰れるはずもなかった。
俺としたことが…
もっと考えて話しかけるべきだった…
「ああ…この寒空の下でボクは1人寂しく野宿しなきゃダメなのかなぁ…」
俺の家に泊まろうとしているのか、俺の方をちらちら見ながら独り言を言い始めた。
「寒空って…今は夏だ!それに、見ず知らずの男の家に居候しようとする女の子がいるか!」
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