悲しみの春

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私と彼が出会ったのは、今日の様に春の匂いが香り始めた6年前の3月。 バイト先の仲間と、「テニスをしよう♪」といつものごとく遊ぶためのテーマを決め、集まったあの日。 「今日、前バイトしてたやつも来るから」 「へぇ」 先輩にそう言われ、そんな気のない返事をした。 これから会う人が、自分が6年間も想い続ける人だなんて、思いもしなかった。 先に集まった人間で、へっぽこテニスをしてる途中。 「ごめん~!遅れたわ!」 漕いできた自転車を止めて、笑いながらコートに入ってきた彼。 正直、特に好みでもなかったし、カッコいいとも思わなかった。 でも、たれた目をさらに細めて笑う顔を見て、「ああ、この人とは仲良くなれそうだ」って直感的に思った。 運命的でも何もない、懐かしい彼との出逢い。 .
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