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「まあ彼氏とはこのまま結婚するんだろうけど、それまでにもっとお金のあるイイ男が現れるかもしれないからね!もっと合コンとか行かないとな~」
そうため息をついて、手に持っていたグラスをテーブルに置く。
彼女の名前は木村葵。
会社の同期だ。
あの結婚式から1週間経った金曜日。
私、葵、それから叶美樹の同期3人組で居酒屋で飲んでいる。
「でも合コンだとイイ男いないからな~」
そう笑って美樹はテーブルの唐揚げをつまんだ。
私は上っ面った笑顔を浮かべ、話を聞いている。
…くだらない悩み。
その程度の気持ちなら結婚しなければいい。
葵の知らないところで、その彼氏が好きで好きでしょうがない子がいるかもしれないのに。
幸せな人間は、幸せに対してなんて鈍感なんだろうとこういう時痛感する。
私はコメントする気になれなくて、グラスに口をつける。
今日は、大好きな巨峰サワーも不味く感じる。
こんな事しか思えない、自分の心の方が腐ってるのは分かってる。
だけど、葵と美紀の会話がとても遠くに感じる。
楽しそうに笑う二人が、心の底ではとてもうらやましかった。
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