第一章~序~

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【琢県楼桑村】 ここに一人の青年があった。 身なりは見すぼらしいがとりわけ聡明そうな瞳や豊かな頬をしており容姿端麗なその姿に賎(いや)しげな様子はなかった。 その者は 性は劉、名は備、字は玄徳 という。村ではその徳の高さや容姿からも評判は良く誰もが信頼を寄せるような者だった。 「未だかつて身治(おさ)まりて国乱るる者をきかざりなり。また未だかつて身乱れて国治まる者を聞かざるなり」 読み終え間もなく書を読み聞かせていた少年の一人が聞いた。 「玄徳さん。なんていう意味?」 「これは君主の身の行いが治まっていれば国が乱れることはない。君主の身の行いが乱れれば国も治まらない。ということだよ」 少年たちはふぅんと聞きながらもその意味を自分なりに解釈しようとしていた。その中で初め質問した少年とは別の少年が 「じゃあ黄巾賊が暴れまわるのは君主の身の行いが悪いからなんだ!!」 まさに真をついたとばかりに自信満々の表情と声で言った。
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