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男はたまたま外に出ていてその異変に気付いた。
かすかに馬蹄が聞こえるのだ。
それに自分だけしか気づいてない。
村人たちはまったく馬蹄が聞こえている風はなく自分一人の聞き間違いだと思うようにした。
しかし確実に音は近づいてくる。
少し高いとこへ登り何もないのを確かめるように町の外に目を向けるとそこにはたちこめる土埃があった。
目を凝らし、そして見えたのは全員が黄色の布で結髪を止めている部隊がコチラへ向かってくる。
言わずもがな黄巾賊だ。
そのころようやく気付き初めた町人たちは誰かの「黄巾賊だ!!」という声を聞き慌てだした。
皆逃げるようにして家に入り、出していた売り物などを隠す。
しかし気付いたのが遅すぎた。
町の端の方では叫び声が聞こえる。
それは物を奪われる者、殺される者たちの断末魔だった。
〈逃げなくては〉
最初に頭に浮かんだのはコレだった。しかしふと劉備のことを思い出した。
〈劉備が、一緒にいる子供たちが危ない〉
早く玄徳の元へ伝えに行かなくては。その一心で彼は走り出していた。
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