第一話

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AM:01:59 今日もこの掲示板にやってきてしまった。 ここはなんだか居心地がいい。 ここの管理人はLという。 彼は気さくな人だ。 ただ、すこしおかしなところもあるが、それはまあ、ネットという特殊な世界においてままあることだ。 特に喧嘩など起こってしまった日には収集がつかなくなったりするのがネットの世界で、それだけにネット上では文字というものの情報量の少なさを痛感せざるを得ない。 芸人が相方に向かって罵るのは良いのに、軽い冗談がネット上では犯罪に成り得る。 いったい何を基準にネットでは振舞えば良いというのか。 いつだったか偉い学者様やらコメンテーターがネットの世界は別世界ではなくリアルとしっかりリンクした、実世界の延長線上とか言っていたが、はっきり言って別世界だ。 そうでなければここまでリアルとネットでズレが起こるはずはないし、なによりネットはネット、リアルはリアルと皆割り切っているではないか。 使っている人間が一番良く分かっている。 AM:02:05 「A:おはようございます!ってだれもいないかな・・・wここマイナースレッドだしねぃwwww」 とりあえず挨拶を書き込む。 こういう時誰からも返事が来ないといい気持ちがする。この掲示板は俺のものだけなんだ。少なくともこの瞬間は。 そしてあとから遅れて来た奴が『早いですね~っ><』なんて書き込んだ日には、昇天するしかない。 AM02:08 ん・・・書き込みがあるな・・・。 「L:お早いですね。いつもあなたが来てるのを、僕は知っていますよ。」 おぉLさんじゃないか。 AM:02:09 「A:あ、ありがとうございますwLさんもこんな時間に早いですねw」 AM:02:10 「L:えぇ、あなたのささやかな趣味を邪魔しに。」 なんだこの野郎・・・。 俺の趣味だと? AM:02:11 「L:最近、誰も来ない時間帯を狙って書き込んで、掲示板を独り占めにしたつもりになって愉悦に浸ってたんでしょう?」 ・・・。 AM:02:12 「A:Lさん、なんだか荒らしみたいですね^^」 ・・・・・・・。 なんだってんだ。 AM:02:13 「L:僕は管理人です。荒らしに成り得ませんよ。」 なんだ、要はお前がこの掲示板を占領したいだけだってことか・・・。 AM:02:14 「A:つまりあなたは神というわけですね?わかりますwwww」
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