第一章

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たるい夏休みの出校日が終わった。 俺は校門で友人達を見送っていた。 「祐輔!おまたせ!」 そう言って寄って来たのは、俺のかわいい彼女、早苗。 俺は早苗の右手をぎゅっと握って、少し微笑んでから歩き出した。 幸せなひととき。 明日は早苗と付き合って一年の記念日。いろいろとサプライズを用意した。 頭の中で、用意したサプライズを練習してみる。よし、いける。 あれこれ考えている俺に気づかず、今日あった事を楽しそうに話す早苗。 こんな日々がいつまでも続けばいいのに。 夏の太陽がオレンジ色に染まり、早苗の頬を紅く染めた。 そういえば、去年の今頃も、俺は早苗に告白するためにサプライズを考えていたな。 その日も、綺麗な夕焼けで。きっと明日も晴れるだろうと期待していたっけ。 その次の日、暑い日差しの中、二人で海水浴に行った。カナヅチの早苗を浮輪に浮かべてちょっと意地悪したりして。 その日の夕方、地平線に沈む夕日を見つめて、俺は早苗に告白した。 まるで昨日のことのように鮮明に思い出された。 明日も、きっと晴れる。俺は、夕焼けを見つめて思った。
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