第一章

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早苗はせっかちな奴だ。しかし俺も同じくらいせっかちであるのだが。 頭から一気にシャワーを浴びて、ある程度身体が温まったところで風呂を出た。 「きゃっ!祐輔!ごめん!」 早苗は持っていたジャージを投げ捨てるように落として背を向けた。 「うわ!ごめん!」 俺はあたふたと下半身を隠した。 「祐輔、早いよ。ちゃんと温まった?」 「うん、平気」 「そっか。タオルはその辺にあるの使ってね」 近くにあったタオルで身体を拭くと、急いで下着を履き、ジャージを着た。 「お父さんのだけどサイズ大丈夫?」 「ちょうどいいよ。ありがと」 俺がそう言うと、早苗はやっと俺の方を見た。顔が真っ赤だった。早苗を大切にしたいと思っている俺は、一年間付き合ってまだキスまでしかしていないのだ。 「驚かせてごめんね」 「大丈夫だよっ」 何故か早苗は更に顔を紅くした。
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