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「君には期待している。夢を、追い続けてほしい」
彼はニッコリと笑う。
「私の名前はハロルド=マッケイン。運送屋ギャラクティカの社長だ。よろしくな。カリン君」
そう言い、右手を差し出す。
彼女は嬉しかった。
今までに自分の夢を応援してくれていたのは彼女の両親だけだったからだ。
社長の有り難さをひしひしと感じ、その目には涙を溜めていた。
「はい! カリン=イナバです! よろしくお願いします!」
そう言うとお互いにしっかりと握手を交した。
「それじゃあ、早速今日からここで暮らしてもらうから」
社長が手を握ったままの格好でポツリと言う。
「………え?」
「いや、だからね、もう君の歓迎会の準備、しちゃったからさ。そういうことで」
彼は握っていた手を離すと、くわえていたタバコの火を灰皿でもみ消す。
「いや、待ってくださいよ!」
カリンは思わず立ち上がる。
「ん?なんか問題あった?」
「あ、いや、唐突だったもので…。 あの、服とか日用品も持ってきてませんし…」
「あー、泊まるって言ってもさ、君1人じゃないから。取り敢えず今日はマーベルちゃんの部屋に泊まってもらうから、そこら辺は心配いらないよ。 必要なものがあるなら今日中に家に連絡しておきなさい。そうすれば明日には着くだろう」
ペラペラと話し、まるで全て決まっていたかのように話を進めていく。
「さ、採用してすぐ住み込みなんですか!?」
「ん?あぁ、まぁカワムラから話を聞いた時点で採用のつもりだったしね。 それに、こんな可愛らしい子だとは思ってなかったし」
彼はニコニコと嬉しそうに言う。
「あ、いやぁ。そんな可愛ぃだなんて」
褒め言葉に弱い。
カリンはそういう性格なのだ。
「それじゃあ、後の事はマーベルちゃんに聞いておいてくれるかい。 私はほら、忙しいもんで…」
「あ、いや、ちょっ!社長!?」
彼女の言葉を無視し、彼はすっくと立ち上がるとドアから出ていってしまった。
ぽつん。
何が何だかわからず立ち尽くすカリンだった。
来たと思ったらすぐに採用され、その場で住み込み開始とは。
カリンにとっては話がトントン拍子で進み過ぎていた。
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