ハジマリ

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俺はあんな深刻そうな橘の顔を今まで見たことがなかった。 …その時、歴史は動き出したのだ。 橘はショーウインドの後ろに右手を伸ばした。 俺は疾風の如く、橘の行動を理解した。 あいつはあろうことかスパイシーチキンを万引きしようとしていたのだ。 休憩室にいたおばさんは、いつの間にかレジの前に立ち、橘の行為を凝視している。 片手にカラーボールを持って。 「おいっ!橘、やめろ!」 しかし、橘は既に未払いのスパイシーチキンをくわえていた。 「うっめ~!!」 橘はいつもの笑顔に戻っている。 金剛力士像のような顔のおばさんは、カラーボールを大きく振りかぶった。 「よけろっ!」 俺は無我夢中で走った。 ただスパイシーチキンをうまそうに食う親友のために。image=237037798.jpg
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