寂しいこと

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回想 -age14- 俺はぼんやりと窓の外を眺めていた。 季節は春。 しかし、温暖化の影響か、桜はすでに散り、青い葉が生い茂っている。 今日なんて、空は気味が悪いほど青い。 夏が迫ってきているのだなぁと、そんなとりとめもないことを考えると、途端、眠気がふわりと襲ってきた。 なぜだかこの頃、こういうことが多い。 理由はわからないが、ふとした瞬間、意識がふつりと途切れるように眠りに落ちてしまうのだ。 今この瞬間も、昼御飯時であるにも関わらず、耐え難い程の眠気の波が襲ってきている。 眠い…… 吐息のような声で、そう漏らした。 誰も聞いている人間などいないけれど。 俺は一度は広げた弁当を包み直して鞄にしまう。 食欲はあまりないうえに、今は何よりも、眠りがほしい。 俺は、机の上に突っ伏して、目を閉じた。 そうすると、まわりの同級生たちがつむぐ喧騒は、幻のように遠くなっていく。 それに少し気分をよくして俺は眠りに落ちる数瞬前、少しだけ口の端に笑みを浮かばせた。
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