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「それじゃあ私はこれで、お供え頑張ってね。」
ヒラヒラと手を振り、笑顔で家に入っていったおばさん。
「ありがとうございます。」
小さくお辞儀をしたあと、おばさんと別れ再びお社に向け歩き出す。
「これが日課で鬼が怖い…か。」
すこし自分の言葉に、後悔を感じた。
だが…
「お?珀華じゃないか。いつも村のためにご苦労だな。ほら、林檎持ってけ。」
おばさんと同じく笑顔で、林檎を投げてくれた近所の八百屋のおじさん。
「ありがとう!!おじさん!!」
タダで林檎を貰えて機嫌が直った俺は笑顔で叫ぶ。
さらに、その言葉の後…
「おい珀華!!これくらいしかできないが飲み物やるから持ってけ。」
「ありがとう!!」
近くにいた別のおじさんまで、飲み物を買ってくれた。
先祖の教えで当然とはいえ、矢代家のしていることは村の安泰に繋がっているらしく、現に災害や事故なども起こっていない。
鬼の祟りなどを信じている大人にとっては、当然有り難いことである。
「いっつもタダで悪いねぇ。陰陽師か何だか知らないが末裔でよかっ……うわぁぁぁ!!」
自ら否定した末裔のことに、少しでも感謝した自分がいたことに苦しむ。
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