約束

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〈おーい〉 「誰!?」 その日は誰かに声をかけられた。 誰かは覚えていない。 俺は、こんな山の中でのどこからともなくした声を疑うべきだった。 〈いつも楽しそうなことしてるねぇ。〉 「楽しそうなこと…増え鬼?鬼が増える鬼ごっこのこと?」 恐怖などまったく感じず、森の中で声の主に平然と話しかける俺。 〈…そっか、増え鬼って言うのか。〉 その声は笑っていた。 〈…なぁ、お前がもうすこし大きくなったら…そうだな、十年後の今日。私もいれてくれないか?〉 この約束を断るべきだった。 「…いいよ!!けどその時はアンタが鬼だよ!?」 だが子供らしい素直で軽率な判断をし、森の中で誰かと約束を交わした。 〈フフ…鬼か、わかった。忘れるなよ少年。じゃあ十年後に。〉 それっきり声はしなかった。 当時の俺はひとときの夢を見ていた感覚で、その後は何事もなかったように家に戻った。 それから十年といった月日が流れ、約束を忘れかけた頃。 その日はやってきた。
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