見慣れない箱

4/9
前へ
/119ページ
次へ
「おはよう。この間の事、考えてくれた?」 宮沢政信は髪をかき上げると言った。 「何度も言ってるでしょ。貴方と遊びに行く気はないの」 恭子は政信を睨むと答える。 「照れなくてもいいよ。旦那さんには内緒にしてあげるから」 「照れてなんかいないわよ。子供の世話もあるし、私は忙しいの」 恭子は言って、清美の方を向いた。 そして、 「行こう」 清美の手を引いて歩き出した。 「待ってくれ」 それを政信が遮る。 「邪魔しないでよ」 恭子は言った。 「一回ぐらい、いいだろ?友達の前だからってかっこつけないでさ。俺の誘いだよ?断るなんて冗談だろ?」 政信は、真顔で言った。 この男は、なんなんだろうか? 恭子は思った。 政信のうわさは知っていた。 女垂らしのナルシスト。大学内では有名な話だ。 全女生徒は政信を警戒している。 だから、誰も彼には近付かない。 はずだった。 なのに未だに女関係の派手な噂が耳に入ってくる。 分かっていても、政信の巧みな言葉と容姿に騙されてしまう。 気持ちは分からなくも無いが、恭子は気持ち悪いとしか思えなかった。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加