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「おはよう。この間の事、考えてくれた?」
宮沢政信は髪をかき上げると言った。
「何度も言ってるでしょ。貴方と遊びに行く気はないの」
恭子は政信を睨むと答える。
「照れなくてもいいよ。旦那さんには内緒にしてあげるから」
「照れてなんかいないわよ。子供の世話もあるし、私は忙しいの」
恭子は言って、清美の方を向いた。
そして、
「行こう」
清美の手を引いて歩き出した。
「待ってくれ」
それを政信が遮る。
「邪魔しないでよ」
恭子は言った。
「一回ぐらい、いいだろ?友達の前だからってかっこつけないでさ。俺の誘いだよ?断るなんて冗談だろ?」
政信は、真顔で言った。
この男は、なんなんだろうか?
恭子は思った。
政信のうわさは知っていた。
女垂らしのナルシスト。大学内では有名な話だ。
全女生徒は政信を警戒している。
だから、誰も彼には近付かない。
はずだった。
なのに未だに女関係の派手な噂が耳に入ってくる。
分かっていても、政信の巧みな言葉と容姿に騙されてしまう。
気持ちは分からなくも無いが、恭子は気持ち悪いとしか思えなかった。
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