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「自意識過剰にも程がある。いい?よく聞きなさいよ?私は旦那を愛してるの。貴方になんか興味もないし、何とも思ってない。はっきり言って迷惑なの。分かったら消えて」
恭子は早口で言った。
「分かった……今日は諦めるよ。明日になったら考えも変わるかもしれないからね」
政信は言うと、その場から立ち去った。
どれだけ、ポジティブなのだろうか。
ある意味尊敬出来るかも。
恭子は呆れながらも思った。
「行こう」
恭子は言って、清美を見た。
清美は、政信の後姿を見つめたまま動かない。
「清美?行くよ?」
もう一度呼び掛けて見るが、清美は反応を示さなかった。
まさか!
駄目、駄目。
政信だけは絶対に駄目。
恭子は清美の腕を引っ張った。
「彼は駄目よ。騙されちゃ駄目。ろくな男じゃないからね。あの男は止めときなさい」
恭子は言った。
「私……別に何とも思ってないよ」
清美は言ったが、一瞬自分から目を逸したのを、恭子は見逃さなかった。
「嘘は駄目。彼だけは止めて。お願い」
恭子は清美の手を握り締めた。
「分かった」
清美は頷いた。
「騙されちゃ駄目だからね?」
恭子は、もう一度、確かめるように言った。
「分かってるって。もう行こう」
清美は言って歩き出した。
恭子もその後を追い歩き出した。
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