海の章

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「ねえ、みいちゃん」 ドアの向こうでママの声がした。 「なによ?」 あたしはぶっきらぼうにこたえた。 「お部屋、入っていい?」 「ダメ。あたしの部屋には入らないでって言ってるでしょ」 「じゃぁみいちゃん、出てきてよぉ」 「だからなんか用なの?」 「だってテレビ、つまんないんだもん」 「しらないわよ。そんなこと」 「それに、お腹すいたんだもん」 あたしは仕方なくドアを開けた。 ママはあたしを見ると嬉しそうに目を輝かせた。 ママを連れてキッチンに行き、冷蔵庫をあける。 冷蔵庫の中から小鍋とタッパを取り出す。 小鍋の中にはビーフカレー。 タッパの中にはポテトサラダが入っている。 全てパパが朝に用意していったものだ。 あたしはカレーを火で温め、ごはんにかけてママに出す。 「うわぁ、おいしそう」 ママはカレーに鼻を近づけてくんくんとにおいを嗅いでいる。 「いいにおい~」 あたしは黙ってままサラダを皿にうつす。 「ねえ、みいちゃん良かったね~。今日は本当にみいちゃんの大好きなカレーだったね~」 ママはそう言ってあたしに邪気のない笑顔をむける。 「おしゃべりばっかしてないで、さっさと食べちゃいなよ」 あたしは言った。
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