月の章

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部屋に入り、ママをソファーに座らせ、ケーキを勧めた。 ママは「いただきます」も言わず、ケーキにかぶりつく。 「もっと、ゆっくり食べなよ」 口の周りにケーキのカスを沢山つけているママの顔を見て、あたしは笑った。 ママは顔色を伺うような不安げな視線をあたしに向けた。 「……みいちゃん、怒ってないの?」 ママの質問に、あたしはうなずいた。 「怒ってないわ」 「どうして?わたし、あの人にまた意地悪言って追い返したのに」 「もうママとは喧嘩しないって決めたの。トモキくんと約束したから」 「約束?あの…人と?」 「そう。だからもうママに酷いことは言わないつもり。……でもね、一つだけ聞いてくれる?」 ママは黙ったままうなずいた。 「いい?ママ。独占欲からは何も生まれやしないわ。あたしはママの人形じゃないのよ。あたしはあたし。恋だってする普通の女の子なの。それだけはわかって」 ママは納得できないという顔であたしを見た。 「でも……みいちゃんはわたしが産んだんだよ。わたしの子供なんだよ…」 「そんなことわかってるわよ。でもね、じゃあ、どうしてあたしはママから産まれてきたのかしら?」 「それは……」 ママは困ったような顔をした。 「ママはパパに恋をしたんでしょ?パパを好きになって、そしてあたしを授かったんでしょ?」 ママは恥ずかしそうにうなずいた。 「そうだよ。わたしはパパが好き。大好きなの。だってわたしはパパの恋人だもん。でもね、みいちゃんのことも大好きなんだよ。わたしとパパとみいちゃんは家族なの。家族はずっとずっと一番の仲良しじゃないとダメなの」 ママは言った。
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