月の章

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「泣かないで、ママ」 あたしはティッシュペーパーを数枚箱から取り出し、ママの涙を拭いてあげた。 「みいちゃん…」 ママは顔を上げてあたしを見つめた。 その目からは再び涙がこぼれ落ちている。 「ママ、あたしはママの娘よ。それは永遠に変わらないわ。例えあたしが恋をして結婚したとしても」 「変わらない……?」 ママはあたしを見つめた。 「ねえ、だってあたしのこの目も鼻も、それから意地っ張りな性格も、全部ママにそっくりじゃない」 そう言うと、あたしの目からも涙がぽろぽろこぼれてきた。 ずっとわかっていた。 だけど認めたくなかった。 ママにそっくりな自分。 ママを憎めば憎むほど、自分が嫌いになった。 ママにそっくりな自分を汚らわしいと思っていた。 だけど、今は違う。 ママが パパが トモキくんが それに、気づかせてくれた。 あたしは汚らわしくなんかない。 ママとパパの愛情をいっぱい受けて産まれてきたのだから。 「あたしのママは世界中探したってママひとりだけなの。この絆は永遠よ。もしいつか離れて暮らすことになったとしても、あたし達の関係はなんにも変わらないわ」
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