月の章

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「ありがとう」 ママは涙を流しながらポツリとそう言った。 「もう、いつまでも泣いてないで、笑ってよ」 あたしはそう言って泣きながら笑った。 「みいちゃん、わたしね、パパと結婚できてとっても幸せなの」 ママは言った。 「ママったら、のろけないでよー。でも確かにパパはいい男だもんね」 ママはうなずいた。 「だからね、だから、もうワガママ言わない。みいちゃんにも幸せになってもらいたいよ。あの人……ううん、トモキくんと」 「ママ…」 「わたし本当はわかってたの、あの人が優しい人だってこと」 あたしはママの体を抱きしめた。 ママの体は小さくて細くて子供のようだった。 「ママ、ありがとう」 あたしは呟いた。
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