太陽の章

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太陽の章

その週末、トモキくんが改めてうちに遊びにくることになった。 あたしはトモキくんのためにレーズンの入ったカップケーキを作ることにした。 「わたしもお手伝いしたーい」 ママがまとわりついてきた。 「ダーメ。あたしがトモキくんのために愛情込めて作るんだから、ママは邪魔しないの」 「やだー。わたしも手伝いたいんだよー」 「もう、だだっ子なんだから。仕方ないわね。じゃあレーズンを乗せていってくれる?」 「はーい。わかりましたー」 ママはウキウキ顔でレーズンの入った袋に手を伸ばした。 ドサッ 「ちょっと、なにやってんのよ」 袋を取ろうとしたママは手を滑らせてレーズンを床にぶちまけたのだ。 「もう。レーズン台無しじゃないの」 「ごめんなさい、みいちゃん」 半ベソのママ。 「仕方ないなー。いいわよ。レーズンはダメになったけど、代わりに愛情をたっぷり入れておくから」 あたしが言うと、ママはホッとしたような顔をして、くすりと笑った。
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