250人が本棚に入れています
本棚に追加
トモキくんはお昼すぎにやってきた。
ブルーのTシャツにジーンズ。
手みやげを持っている。
有名な洋菓子屋さんの名前が印刷されたケーキ箱だ。
ママは恥ずかしそうに、あたしの陰に隠れている。
「こんにちは」
トモキくんはそう言って頭を下げた。
「ママ、ちゃんと挨拶しなよ」
あたしはそう言ってママの手を引っ張った。
ママはクネクネしながらトモキくんの前に立った。
「お母さん、良かったら、これ」
トモキくんはママに向かって手みやげのケーキ箱を差し出した。
ママは急に固まったように動かなくなった。
あたしはまたママが理不尽に怒り出すのではないかと思い、ハラハラした。
だけど、ママの表情は険しいものではなかった。
穏やかだが真剣に何かを考えているような表情だった。
最初のコメントを投稿しよう!