太陽の章

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トモキくんはお昼すぎにやってきた。 ブルーのTシャツにジーンズ。 手みやげを持っている。 有名な洋菓子屋さんの名前が印刷されたケーキ箱だ。 ママは恥ずかしそうに、あたしの陰に隠れている。 「こんにちは」 トモキくんはそう言って頭を下げた。 「ママ、ちゃんと挨拶しなよ」 あたしはそう言ってママの手を引っ張った。 ママはクネクネしながらトモキくんの前に立った。 「お母さん、良かったら、これ」 トモキくんはママに向かって手みやげのケーキ箱を差し出した。 ママは急に固まったように動かなくなった。 あたしはまたママが理不尽に怒り出すのではないかと思い、ハラハラした。 だけど、ママの表情は険しいものではなかった。 穏やかだが真剣に何かを考えているような表情だった。
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