太陽の章

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「わたしね、よく覚えてるんだよ。 みいちゃんが産まれた日はね、雨が降っていたの。 わたしは頭が悪いから、難しいことは覚えられないし、いろんなことを忘れちゃうんだけどね、でも、みいちゃんが産まれた日のことだけは絶対に忘れないの。 その日はね、朝からお腹が痛くてずっとずっと泣いていたの。 パパがお仕事を休んで病院に連れて行ってくれてたの。 ベッドの上に寝かされて、パパがずっと背中をさすってくれてたんだけど、だんだん痛くて痛くて我慢できなくなってきて、わたし大声を出してワァワァ泣いたわ。 パパは頑張れって何度も言ってくれたけど、わたし絶対に頑張れないって思った。だって本当に痛かったの。痛くて痛くて死んじゃうかもしれないって思ったの。 そしたら看護婦さんと先生が来てね、お腹に機械を付けてくれたの。 ドクン、ドクン て音がして 赤ちゃんの頑張ってる音だよ。 って教えてくれたの。 わたし、もう本当に痛くて死んでしまいそうだったの。けど、その音を聞いてたら、頑張ろうって思えてきた。 赤ちゃんが頑張ってるんだから、わたしも頑張ろうって。 それから別の部屋にに運ばれたの。 おしっこみたいなお水も漏れて、またどんどんお腹が痛くなってきた。 パパが手を握って頑張れって何度も言ってくれた。 わたし、頑張ったんだよ。 わたし、なんにもできないし、みんなに迷惑ばかりかけてるけど みいちゃんを産むときだけは、本当に頑張ったんだよ。 ウーンッ ウーンッ って一生懸命力入れて 赤ちゃんが出てきたとき 本当に嬉しくて嬉しくて自然に涙が出てきたよ。
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