太陽の章

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赤ちゃんね、オギャァオギャァって大きな声で泣いてた。 看護婦さんが抱っこして連れてきてくれた。 小さくて細くて赤くて、一生懸命泣いてたよ。 触ると温かかった。 わたしの赤ちゃん。 わたしの赤ちゃん。 わたし、お母さんになったんだって思った。 本当にかわいくてかわいくて。 嬉しかった。 パパが名前を付けてくれたの。 美咲 この世に美しく咲く花のような子になってほしいって。 どんなにつらいことがあっても負けずに、美しく咲き誇れるようにって。 わたしはみいちゃんの名前の意味をね、 何十回もパパに聞いたの。 わたし覚えておきたかった。 漢字も全然覚えられないし 算数も、なんにもわからないけど でも、覚えておきたかったの。 みいちゃんの名前の意味だけは。 パパがね、わたしに『お日様になって、美咲を照らしてあげなさい』って言ってくれたんだ。 わたし、お日様になろうと思った。 ずっとみいちゃんのこと照らして守っていこうって思った。 みいちゃん わたしね、みいちゃんが大好きなの。 産まれたときから 今もずっと…… みいちゃんのお日様になりたかったの。 わたしなんかじゃお日様になれないことはわかってたけど それでもなりたかったの」 ママはそう言って俯いた。
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