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雲の章
朝の教室はガヤガヤとうるさく、汗と整髪料の混ざった妙なにおいがする。
「おはよう、美咲」
席に着くと、メイがいつものように駆け寄ってきた。
「おはよう」
あたしは含み笑いをしながらメイの顔を覗き込んだ。
「どうしたの?」
メイは不思議そうにあたしを見る。
「昨日、メールあったでしょ」
「メール?」
「そう。トモキくんから」
メイはあたしを見つめたまま黙っていたが、しばらくするととても悲しそうに笑って
「あたしにはなかったよ」
とこたえた。
あたしは驚いて何も言えなくなった。てっきりあたしに着たメールと同じようなものがメイにも届いていると思っていたのだ。
「美咲にはメールがあったの?」
メイは静かな声でそう聞いた。
あたしは返事に困ってメイから目をそらしたが、それでもメイの視線が真っ直ぐ自分に注がれているのを感じ、仕方なくうなずいた。
「そっか。仕方ないよね」
メイはそう言って目を伏せて笑った。
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