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風の章
時計のベルで目が覚めた。
キッチンに行くと、パパが分厚いパンにバターを塗っているところだった。
「おはよう、美咲」
パパは毎日同じ笑顔をあたしに向ける。
あたしは何も応えずに、冷蔵庫から紙パックの牛乳を取り出してコップに注いだ。
「今日から新学期だな。気合い入れて朝食作ったからちゃんと食っていけよ」
あたしは黙ったままテレビに目をやる。
紫の衣装をまとった怪しげな占い師がブラウン管の向こうで微笑んでいる。
今日の乙女座は恋愛運が絶好調らしい。
「ばかみたい」
あたしは小さくつぶやいて、牛乳を飲み干した。
「美咲、ママを起こしてきてくれないか?」
ポテトサラダにマヨネーズを加えているパパをチラリと見た後
「しらない」
と言ってあたしは自分の部屋に戻った。
髪をとかし、制服を身につけ、カバンを持つ。
出かける準備を整えてから、パパとママの寝室を覗いてみる。
幸せそうな寝息をたてて毛布にくるまっているママ。
なんの邪気もない寝顔をしている。
だけど、あたしはママが憎い。
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