風の章

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新学期。 今日から高校二年生だ。 学校まで、バスで一時間半。 地元からずいぶん離れた高校に通っている。 通学は大変だけど、学校生活は中学のときよりずっとマシだ。 高校には居場所がある。 誰ひとりママのことを知る者がいないからだ。 のどかな山道を走るバスの窓から満開の桜が見える。 澄んだ空に淡いピンクが美しい。 だけど、あたしは美しいものなんか信じない。 風が吹けば花弁は空に舞って、いずれ地面に落ちて塵になるのだから。
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