大地の章

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大地の章

あたしのママは知的障害者だ。 40歳だけど、小学校低学年の知能しかない。 小さな頃、あたしはママが大好きだった。 いつも、どこに行くのもママと一緒じゃなきゃ嫌だった。 一緒にママゴトをしたり、追いかけっこをしたり、ボール遊びをしたり。 ママはあたしの一番の親友だった。 「姉妹みたいだな」 パパはいつもそう言って目に皺を寄せて微笑んでいた。 あたしは幸せだった。 大好きなママがいて大好きなパパがいて、それ以上望むことなんてなかった。 だけど。 いつからだろう。 いろんなものが崩れ始めたのは……。 きっとあたしがママの精神年齢を追い越してしまったからだ。 ママはいつの間にかあたしの親友ではなくなっていた。
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