冬の妖精

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冬になり、辺りはしん…と静まっていた。 ここは山の奥地。 ローティは、ただひたすら歩いていた。 奥地の洞窟にいる、 一匹の、冬の蝶を探しに… ローティは昆虫採取が趣味だった。 これまでにレアと言われる昆虫は、ほとんど採取した。 色鮮やかな蝶に、 珍しい声で鳴く蝉、 力の強い甲虫… しかし、他にも素晴らしい昆虫がいたのだ。仲間から奇妙な話を聞いた。 「さすがのお前でも、冬の蝶を見たことはないだろうな」 「冬の蝶だと?面白い。冬の時期は寒くて、蝶なんかいない」 鼻で笑って、さて仕事に戻るかと言うと、 「いるんだよ。山の奥地に」 「まだ言うのか」 「一人、見た奴がいる。写真を貰ったんだ‥ほら」 仲間はスーツのポケットから、写真を取り出した。
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