歪んだ花

6/8
前へ
/160ページ
次へ
また、あの優しい香りがする… 姉は奥へ、奥へと入って行く。 妹も後に続いた。 早く帰りたい気持ちが、頭中に巡る。 とにかく気味が悪かったのだ。 「…い」 声がした。 いきなりだったので、聞き取れなかった。 「どなた?いらっしゃるの?」 姉が周りを見渡す。 「いらっしゃい」 姿が見えた。優しそうなお爺さんが、花の手入れをしている。妹はホッとした。 「どんな花をお探しかな」 にっこり微笑むと、一輪の白い、小さい花を二人にくれた。 「可愛い…ありがとうございます」 妹も、にっこり微笑んだ。 「これをもらいに来たんじゃないわ」 姉はタイルの剥がれた床に捨てると、赤いハイヒールで踏みにじった。 「まあお姉様!なんてことを‥ごめんなさい。お爺さん‥お花が…」 妹は床の花を拾いあげた。 お爺さんは一瞬、顔を曇らせたが、また微笑んだ。 「いいんだよ。これは安い花だ。もうじき枯れていた。何をお探しだい」 「この中で、一番美しく、高いお花を下さる?」 姉はブランドバックから、サイフを取り出した。
/160ページ

最初のコメントを投稿しよう!

114人が本棚に入れています
本棚に追加