114人が本棚に入れています
本棚に追加
また、あの優しい香りがする…
姉は奥へ、奥へと入って行く。
妹も後に続いた。
早く帰りたい気持ちが、頭中に巡る。
とにかく気味が悪かったのだ。
「…い」
声がした。
いきなりだったので、聞き取れなかった。
「どなた?いらっしゃるの?」
姉が周りを見渡す。
「いらっしゃい」
姿が見えた。優しそうなお爺さんが、花の手入れをしている。妹はホッとした。
「どんな花をお探しかな」
にっこり微笑むと、一輪の白い、小さい花を二人にくれた。
「可愛い…ありがとうございます」
妹も、にっこり微笑んだ。
「これをもらいに来たんじゃないわ」
姉はタイルの剥がれた床に捨てると、赤いハイヒールで踏みにじった。
「まあお姉様!なんてことを‥ごめんなさい。お爺さん‥お花が…」
妹は床の花を拾いあげた。
お爺さんは一瞬、顔を曇らせたが、また微笑んだ。
「いいんだよ。これは安い花だ。もうじき枯れていた。何をお探しだい」
「この中で、一番美しく、高いお花を下さる?」
姉はブランドバックから、サイフを取り出した。
最初のコメントを投稿しよう!