風、吹きて

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     10        怒りが頂点に達した祐助は、我を失い力の限り、一の左頬を思いっきり平手打ちした。 「申し訳ありません!」 一は素早く起き上がり、床につく程、頭を下げた。 「まぁよい。して、相手はどこの者だ?」 「旗本にございます」 「それはまずいのう……」 祐助は腕を組み、表情を曇らせた。 「誰かに顔は見られたか? ここまで来るのに、誰にも会わなかったか?」 「会っていませんが、顔は見られたかも知れません」 「ますます、厳しいのう………」 祐助は部屋の中を行ったり来たりを繰り返す。その光景を一は、不安げに眺めていた。 「いたしかない。京に儂の旧友がおる。そいつを訪ねるんだ。そして、ほとぼり冷めるまで、匿ってるんだ」 「承知致しました」 一は早急に荷をまとめて、逃げるように屋敷から旅立った。
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