23人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
10
怒りが頂点に達した祐助は、我を失い力の限り、一の左頬を思いっきり平手打ちした。
「申し訳ありません!」
一は素早く起き上がり、床につく程、頭を下げた。
「まぁよい。して、相手はどこの者だ?」
「旗本にございます」
「それはまずいのう……」
祐助は腕を組み、表情を曇らせた。
「誰かに顔は見られたか? ここまで来るのに、誰にも会わなかったか?」
「会っていませんが、顔は見られたかも知れません」
「ますます、厳しいのう………」
祐助は部屋の中を行ったり来たりを繰り返す。その光景を一は、不安げに眺めていた。
「いたしかない。京に儂の旧友がおる。そいつを訪ねるんだ。そして、ほとぼり冷めるまで、匿ってるんだ」
「承知致しました」
一は早急に荷をまとめて、逃げるように屋敷から旅立った。
最初のコメントを投稿しよう!