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昼下がり、江戸市ヶ谷で足をふらつかせた男は隣にいる男に支えられながら、おぼつかない足取りで歩いていた。
「佐之助、お前飲み過ぎだぞ」
支えていた男が口を開く。
「うっせぇ! 飲み過ぎていないわ!」
酔っ払った男はふらふらになりがらも、反論する。ちょうどそのとき、脇を通った男の刀と支えていた男の刀が当たった。しかし、それに気付かず、通り過ぎようとしていると、脇を通った男は声を上げた。
「そこの者、しばし待て!」
「なんだ」
男の声に呼び止められると、眉間に皺を寄せて振り向いた。
「今、鞘が当たったぞ」
「そうか。それはすまなかった」
支えていた男は頭を下げて立ち去ろうとした。
「貴様、馬鹿にしてるのか!」
「馬鹿になどしていない」
「それが馬鹿にしていると言うのだ!」
手にしていた柄を抜いて、刀を構えた。
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