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アルゼの呼び掛けに、一際大きく震え始める。
ルーシーと呼ばれた少女は、スゥーと息を吸うと、叫んだ。いや、むしろ吠えた。
「あんた! 昨日、変な女と一緒にいたでしょ!?」
アルゼは口を大きく広き、ルーシーを食い入るように見る。
「お前……誰?」
「ルーシーに決まってんでしょ! あんた、ふざけてんの!?」
声のボリュームを下げずに、また吠える。
アルゼはルーシーに近寄り、その肩をポンと叩いた。そうされれば、彼女がおとなしくなると知っていたからだ。
「な、何よ?」
原因は解らないが顔を赤くして、ルーシーが尋ねてくる。
アルゼは一回咳払いして、言った。
「ルーシー、お前さ、ストーカーか?」
直後、アルゼの身体が飛んだ。痛みが頬を走り、『あ、殴られたんだ』と気づいた頃には地面に背中が付いていた。
殴られ赤くなった頬を手で押さえ、殴った張本人を見る。
「な、何すんだよ!?」
「当然の報いよ!」
一言で一蹴し、アルゼに近づくルーシー。腰に手を当て、アルゼを見下ろす。
「さぁ、昨日のあの女のことを話して貰うわよ」
「……あの、拒否権は?」
「あるわけないでしょうが」
アルゼは朝から何回目かもわからないため息をついて、仕方なく昨日の出来事を話し始めた。
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