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――昨日の正午過ぎ。
「ちょっと、退いてくださーい!!」
何処からわからない声が聞こえた。サッと身構え、何事だと周りを警戒する。
だが、アルゼの周りに存在するのは左側にある高層ビルと、右側にある児童公園だけだ。
どちらも、危険が迫っているような様子はない。
「速くーーっ! 退いてくださーーい!!」
また聞こえた。しかし、今度はどこから発せられた声か、わかった。
信じられないことだが、自分の頭上からだ。
アルゼはまさかなと疑問を捨てきれないまま、上を向くと――
「ええーっ!? 何でっ!?」
少女が落ちてきている。しかも、尋常じゃない速さで。
眼を疑う。だが、目の前の光景は変わらない。
もう間近に、その少女は迫っていた。
「ああ、もう!」
少女が落ちてきそうな場所に移動し、腕を突き出す。受け止めようと思い、そう動いたのだが、アルゼは重力の凄さを舐めていた。
腕を出した瞬間、少女が落ちてきた。とてつもない衝撃が腕を駆け巡る。
アルゼは屈しそうになった膝に頑張って耐え、少女を懸命に支える。
「ハァハァ…………君、大丈夫?」
無事に支えきった少女を地面に下ろし、アルゼはまずそう訊いた。
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