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「はい! 大丈夫です!」
元気一杯の声で答えられた。現に、もう自分の足で立っているし、大した怪我もなさそうだ。
ホッと安心したところに、少女があらっと何かに気づいたように言ってきた。
「もしかしたら、あなたはこの都市の人ですか?」
「……そうだけど?」
都市の人間じゃなかったら一体何なんだよ!?
そう答えたいのをグッと堪えて、静かに問い返す。
少女は見るからに嬉しそうな笑顔を作った。
「なら、わたしを案内してくれませんか?」
「──……はい?」
「だから、わたしをこの都市の重要な場所などに案内してくれませんか?」
正直、断りたかった。
人付き合いはあまり好きな方ではない。クラスメートに一人、抜群にそういうのが上手いやつはいるが、自分はそうではない。
断ろうとしようとした時、少女が自分の手を握り、引っ張った。
「ほらっ、速く速く! 時間はあまり待ってくれませんよ」
「ちょ、ちょっと、待ってくれ」
アルゼの言葉が聞こえてないのか、少女はどんどん進んでいく。
待ってくれないのは君だろうが!
心の中でだけでそう突っ込み、ため息をつきながら、アルゼは少女に引かれるように歩き出した。
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