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それから、時は静かに流れた。アルゼは相変わらず、少女に引っ張られるように連れ回されている。
少女の名前は、ユフィ・アンスロートというらしい。
これまでのユフィを見て、統合した結果、マイペースな娘と判断している。
面倒くさいので、もう抵抗はしないが、自分を見る視線が少々痛い。端から見れば、自分を頼りない彼氏としか見られていない光景だということは気づいている。
「あの! あの建物は何ですか!?」
今、歩いている大通りの先にある、豪勢な建物を指差すユフィ。顔を輝かせている。
アルゼは苦笑いしながら、答えた。
「あれは、魔法学園だよ。知らないのか?」
「都市の魔法学園なのですね。うわー、初めて見ましたが素敵です!」
アルゼの顔に怪訝の色が浮かんだ。
ユフィは今、何と言った?
確か、『初めて見ましたが素敵です!』だった。
どういう意味だ?
「なぁ、ユフィ。初めて見たってどういう──」
「あ、あそこにアイスクリーム屋がありますよ! ほら、行きましょう」
ユフィがアルゼの言葉を遮り、アイスクリーム屋に向かって走り出す。
その後ろ姿は純粋無垢な少女に見える。
……だが、人をそう簡単に信用してはならない。これは、今まで生きていた人生の中で学んだ教訓の一つだった。
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