523人が本棚に入れています
本棚に追加
「魔法の練習ですか、ヴァルト先輩」
不機嫌そうにアルゼを睨む彼の名は、ヴァルト・ホルセイフ。二年生であるアルゼの一個上の先輩である。
ヴァルトはツンツンに逆立てている漆黒の髪を無造作に掻いた。
「おい、アルゼ! テメェ、何勝手に女を連れて遊んでやがんだ? そんなことする暇があるんなら、少しは魔法の練習でもしやがれ!」
「あーー、いや、これは色々と訳がありまして……」
「あの! 何でそんなに魔法を練習してるんですか?」
ヴァルトの苛つきなど、完全に無視して、ユフィが訊いた。
アルゼは内心ため息をついて、行く末を見守る。
「アルゼ、この女は誰だ?」
「彼女は、ユフィ・アンスロート。さっき、たまたま会ってしまい、そのまま案内役に」
「ったく! テメェがいつもナヨナヨしてっからだ、ボケ」
言い返す言葉もなく、あははと愛想笑いする。というよりは、愛想笑いしてた方が後々にあまり影響しないのだ。
ヴァルトは細かいことを一々覚えている人で、言い返したりすると面倒くさいことになる。
「ユフィ……とか言ったか?」
「はい! なんでしょう?」
「オレが魔法を練習してんのは、来週に小隊決闘があるからだ。聞いたことあるだろ、小隊決闘は」
最初のコメントを投稿しよう!