Chapter1 君の名前

12/42
前へ
/91ページ
次へ
「魔法の練習ですか、ヴァルト先輩」  不機嫌そうにアルゼを睨む彼の名は、ヴァルト・ホルセイフ。二年生であるアルゼの一個上の先輩である。  ヴァルトはツンツンに逆立てている漆黒の髪を無造作に掻いた。 「おい、アルゼ! テメェ、何勝手に女を連れて遊んでやがんだ? そんなことする暇があるんなら、少しは魔法の練習でもしやがれ!」 「あーー、いや、これは色々と訳がありまして……」 「あの! 何でそんなに魔法を練習してるんですか?」  ヴァルトの苛つきなど、完全に無視して、ユフィが訊いた。  アルゼは内心ため息をついて、行く末を見守る。 「アルゼ、この女は誰だ?」 「彼女は、ユフィ・アンスロート。さっき、たまたま会ってしまい、そのまま案内役に」 「ったく! テメェがいつもナヨナヨしてっからだ、ボケ」  言い返す言葉もなく、あははと愛想笑いする。というよりは、愛想笑いしてた方が後々にあまり影響しないのだ。  ヴァルトは細かいことを一々覚えている人で、言い返したりすると面倒くさいことになる。 「ユフィ……とか言ったか?」 「はい! なんでしょう?」 「オレが魔法を練習してんのは、来週に小隊決闘があるからだ。聞いたことあるだろ、小隊決闘は」
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

523人が本棚に入れています
本棚に追加