523人が本棚に入れています
本棚に追加
勝ったと思った。
奴は爆散し、機械の破片がそこら中に散っていく光景か見える。
その筈だった。
俺は奴を楽観視し過ぎだったようだ。
『……この程度か? だとしたら、興醒めだ。我が定めた敵として、お前は間違っていたようだな」
煙が晴れ、奴の姿があらわになる。
ひびなどなかった。それどころか、傷一つなかった。
膝が折れそうになる。もしくは心が折れそうになった。
でも……
「興醒めで結構。敵として俺が間違っていても結構。けど、俺は負けられない!」
『その女の人間のためにか? まったく、それがお前の力を殺しているとも知らずに……」
「勝手にほざいてろ! ルリ・コウス・ガイア・ゼル……レルトーション!」
杖から発射した暗褐色が漆黒の闇に溶けるようにして消える。俺は杖を左右に二回振った。
相変わらず、奴は何もせずに仁王立ちしているだけ。
そして、最愛の人は泣きながら俺にしがみついてる。杖を持ってない方の手で、その髪を撫でる。
「安心しろって。お前は死なないよ」
「…………ホント? サティ……死なない?」
「うん、サティは死なない。だから、安心して」
最初のコメントを投稿しよう!