Chapter0 悲劇

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「……良かったァ……!」  死ぬことを一番恐れているサティに、わざわざ奴の力の事を言う事などない。サティに、心配させたくないんだ。  俺がサティから前方に視線を戻すと、奴は苦笑しているように見えた。俺が放った重力の魔法を全て振り払ったようだ。 『我は、お前の行動の意味が解せない。我とお前の力の差は圧倒的に違う。それでも大切な女には大丈夫だと言う。正気なのか、お前は?』  奴の言う通りなのは認めるさ。  俺には力が足りない。天才と言われた魔法も奴には全然効いてない。  だからと言って、諦めることなんてできるか? できるわけがない。俺が諦めたりしたら、サティはどうなる?  想像したくない。想像通りの未来になってほしくない。だから、俺は戦うんだ。 「アイスブレード!」  手に、全てを凍らす魔法剣を出現させる。俺の得意魔法の一つ。これで決着をつける。 『我を凍らすつもりか。いいだろう、試してみるがいい! そして知れ! 我を凍らすという浅はかな考えなど、無駄だということをな!』 「ああ、試してやるよ! そして知ってやる! お前を凍らすということが最高の考えだってことをな!」  足に風の強化魔法を与え、爆発的な脚力アップを図る。魔法剣を中段で構え、俺はサティを少し下がらせた。
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