523人が本棚に入れています
本棚に追加
「……良かったァ……!」
死ぬことを一番恐れているサティに、わざわざ奴の力の事を言う事などない。サティに、心配させたくないんだ。
俺がサティから前方に視線を戻すと、奴は苦笑しているように見えた。俺が放った重力の魔法を全て振り払ったようだ。
『我は、お前の行動の意味が解せない。我とお前の力の差は圧倒的に違う。それでも大切な女には大丈夫だと言う。正気なのか、お前は?』
奴の言う通りなのは認めるさ。
俺には力が足りない。天才と言われた魔法も奴には全然効いてない。
だからと言って、諦めることなんてできるか? できるわけがない。俺が諦めたりしたら、サティはどうなる?
想像したくない。想像通りの未来になってほしくない。だから、俺は戦うんだ。
「アイスブレード!」
手に、全てを凍らす魔法剣を出現させる。俺の得意魔法の一つ。これで決着をつける。
『我を凍らすつもりか。いいだろう、試してみるがいい! そして知れ! 我を凍らすという浅はかな考えなど、無駄だということをな!』
「ああ、試してやるよ! そして知ってやる! お前を凍らすということが最高の考えだってことをな!」
足に風の強化魔法を与え、爆発的な脚力アップを図る。魔法剣を中段で構え、俺はサティを少し下がらせた。
最初のコメントを投稿しよう!