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「……?」
今にも泣きそうな瞳で俺を見る。
こんなにも可愛くて、こんなにも弱くて、こんなにも甘えん坊なサティを護るために、俺は奴を倒す!
「行くぞ!」
言下、俺は幻影を残して姿を消失させる。風の魔法の効力のお陰だ。
奴の真後ろに移動した俺は、魔法剣を振り降ろす。青色の軌跡が、漆黒の空間を走り、奴の背中に吸い込まれていく。
だが、奴はそれを避けた。肉体強化している俺の眼ですら追い付けぬほどの速さで、その場から消えたのだ。
斬撃は空気を斬るだけに終わり、俺はバランスを整えるために、一旦別の場所に移動した。
「……奴は……」
『呼んだか、我を?』
背後で声がした。しかも、機械染みた。
俺は地面を蹴り、動いた。一ヶ所に移動するのではなく、奴が追い付けれないように何回も。
しかし、どう動いても、何回も移動しても、奴の気配は俺の背中から感じ取れた。
『遅いぞ。お前、本当にファントムペインか? 余りにも実力が無さすぎる。まさか……偽者?』
「あんたの実力を計ってるためだって気づいて欲しいね、マジで。でも、そろそろ、本気いっとこうかな?」
強がってみたけど、さっきの速さが限界だ。奴の速さなんか眼で追えなかった。
正直、どうしようか迷う。
俺と奴の力の差がここまであるとはな。
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