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冷静に現状を分析してみて、俺の勝てる確率はほぼゼロに等しい。しかし、圧倒的に違う実力から、奴は油断するかもしれない。
あまりにも、運任せなのだが。
『どうした? 今までのが我の実力を計るためだとしたら、さっさと本当の実力を見せてくれ。我は本気のお前と戦いたいのだ』
あくまで俺に頼み事をするような物言いだ。
奴は、世界最強と名高い機妖なのに。
「一つ……聞いても良いか?」
『何だ?』
「サティを逃がすことはできないだろうか? もし逃がしてくれれば、本気でやってやるよ」
奴は少しの間考え、そして答えを出した。簡潔に、素直に、俺の期待してなかった答えを。
『駄目だ。それはさせん』
「…………何でだよ」
『その娘には、後で用があるのだ。とても重要な──』
「んなもん、知るか!!」
叫んでいた。
暗闇が裂けるように轟く。俺自身の悲鳴にも思えた。
魔法剣を一振りして、切っ先を奴に向ける。
「あんたが、サティにどんな用があろうとか知ったこっちゃねぇんだよ! 俺は……サティを逃がしたいだけなんだ! そしたら、本気で戦える! あんたが望むように本気で戦ってやるよ! だから!!」
『それでも我は、その娘を連れていかねばならぬ』
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