Chapter0 悲劇

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 冷静に現状を分析してみて、俺の勝てる確率はほぼゼロに等しい。しかし、圧倒的に違う実力から、奴は油断するかもしれない。  あまりにも、運任せなのだが。 『どうした? 今までのが我の実力を計るためだとしたら、さっさと本当の実力を見せてくれ。我は本気のお前と戦いたいのだ』  あくまで俺に頼み事をするような物言いだ。  奴は、世界最強と名高い機妖なのに。 「一つ……聞いても良いか?」 『何だ?』 「サティを逃がすことはできないだろうか? もし逃がしてくれれば、本気でやってやるよ」  奴は少しの間考え、そして答えを出した。簡潔に、素直に、俺の期待してなかった答えを。 『駄目だ。それはさせん』 「…………何でだよ」 『その娘には、後で用があるのだ。とても重要な──』 「んなもん、知るか!!」  叫んでいた。  暗闇が裂けるように轟く。俺自身の悲鳴にも思えた。  魔法剣を一振りして、切っ先を奴に向ける。 「あんたが、サティにどんな用があろうとか知ったこっちゃねぇんだよ! 俺は……サティを逃がしたいだけなんだ! そしたら、本気で戦える! あんたが望むように本気で戦ってやるよ! だから!!」 『それでも我は、その娘を連れていかねばならぬ』
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