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思った通り、部屋の中は大層な広さを誇っていた。
空間内は殺風景なものの、歴史を積み重ねて造られた重みのある内装に、数分目を奪われていた。
人間の誇張する様を物語っていると言えようか。
ここが王の間と呼ばれる場所なのだろう。
奥にその象徴されるべき存在がいた。
俺と悪魔の出現に慌てふためく衛兵達とは違い、王座にどっしりと腰を据えて。
床まで届きそうな漆黒の髪。触れれば溶けていきそうな粉雪のように白い肌。
恐怖という文字を知らないのか、朱の紅が塗られた唇は楽しそうに微笑む。
俺自身、“女”という存在を知らないわけでは無かった。
ただそこに、異性に興味を抱く感情を持たなかっただけだ。
『我が名はネイビス国が女王、メルシア。……あなた方は?』
メルシアと、出逢うまでは。
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