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従って来てみればどうだ。狭く薄汚い個室の中へこの俺を放り込みやがった。
たとえ、生まれ変わる保証があったとしても、コイツだけは消滅逝きにしてやろう。
その消滅逝き決定の衛兵が柵で仕切られた向こう側から話し掛ける。
『まもなく女王陛下がお見えになる。貴様がどこの誰かは知らんが、無礼な態度は慎むように』
女王陛下――。
メルシアとまた会える。
この時をどれほど待ち望んだ事か。
今の俺ならばメルシアを前にして臆する事なく対峙できる。ただ黙って10年という歳月を過ごしていたわけではない。
知識も力も王としての威厳も、限界を極めるまでに身につけた。
今の俺の姿を、メルシアに見せてやりたい――。
俺はその時、メルシアに好かれる事だけを考えて、重大な事に気づいていなかった。
メルシアと対面する時の理想像は、腕を組んで仁王立ちで上から見下すようなスタイルだったはず。
しかし今の俺の状態、腕を後ろに手首は固定され、地に膝を下ろしているという恰好だ。
これを無様と呼ばず、何と呼ぶ。
手首の固定されたものを外そうと、力を入れる前に、柵で仕切られた向こう側の扉が開かれた。
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