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まず、目に入ったのが相手の衣服だ。
10年前は黒衣だったが、今日は白緑の優しい印象を与える服を着ている。
足首まで隠れるロングスカート。そこからゆっくりと上に向かって目線を動かせば……。
抱きしめただけで簡単に折れてしまいそうな細いウエスト。胸は中々。
首回りにはクリーム色の絹を巻き、交差させたちょうど胸の中心部分には薔薇のような花が縫い付けてあった。
やはり上に立つ者だけあって、慎ましやかだが気品が漂う。
当然俺も、普段は着用しない正装を着ている。似合わないなど関係ない。必要なのは相手にどれだけ自分の価値を植え付けられるかだ。
……こんな状態だが。
そして、
透き通る白い肌の喉から、美しく象った輪郭のその顔へ――。
メルシアをこの目にした瞬間。
俺は自分の目を疑った。
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