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メルシアも背は高い方であったが、俺と10センチほど差がある。
"見下して欲しい"と言っているような身長差だ。
望み通り、俺は応えてやった。
すると、メルシアは冷たい視線を向けたまま、睨むような目つきで俺を見上げてきた。
上目づかいで見上げてくるその様に、心打たれるものがある。
さすがは一度は俺を退かせただけの女ではある。動揺すら表さず、反感を見せるのは、女王として今まで培った賜物だろうか。
見下しつつそんなメルシアに見とれ、感心するような心持ちでいると、突然の嵐のようにメルシアに変化が起きた。
一気に急降下した眉尻、瞳には涙を含ませ、下唇を食い縛って、まるで泣くのを我慢する子供のような変化を遂げる。
驚かないわけがない。
驚くというより、呆然とするしかない。
メルシアが態度を変えた事で俺も通常に戻り、戸惑いながら様子を窺う。
するとメルシアの背後に控える数人の衛兵達が、『あーあー泣かせたー』と言いたげな白い目で俺を見てきた。
『……俺が何した!』
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