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『おい、俺のどこが捨て人だ? この恰好を見て、どうしたらそんな』
『牢屋に入れられてたの』
どこに隠していたのか、メルシアは冷たい笑みを浮かべながら言った。
どんどん崩れていく俺のメルシアという存在。
『なんと! 狼藉者の侵入をここまで許してしまうとは!』
嘆かわしや……と額に手をあてマーサは嘆く。
『……もういい。とにかく俺は帰らせて貰う』
衝撃的な事が引き続き起こったせいか、頭が痛かった。俺にはまだ人間界に訪れるのは早かったのかもしれない。
もう10年は待とうか……。
そう考えた時、ふと気づいた事がある。
俺の勘違いかもしれないが、メルシアは歳をとっていないように見えた。
むしろ若くなっている。
10年前は20代後半だったように見えて……。しかし、今目の前にいるメルシアは俺よりも若い20代前後。
気のせいだろうか。
何か引っ掛かるものを感じながら、俺はその場を立ち去る。が、今度はマーサに引き留められる。
『待ちなさい。今城内を歩いてもまた捕えられるだけですよ』
『問題ない』
そんなもの力ずくで突破するまでだ。
『待ちなさい』
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